以前より韓国、そしてSteam国際版がリリースされていたMMORPG「Tree of Savior」、通称ToSが2016/08/24より、いよいよ日本に上陸を果たしました。
近ごろは盛り上がっているMMORPGが非常に少なく、昔からこのジャンルを遊んでいたプレイヤーから大注目を浴びていたタイトルであるためか、多くの人々が押し寄せ連日大盛況。
初日に3つだったサーバーは今や5つにまで増設され、また過密サーバーへの機器増設が行われるなど、近年のMMORPGとしては珍しく初動に成功したタイトルとなっています。
筆者も例に漏れず前々から期待していただけに、初日から気合を入れてプレイをし、2016/09/02現在200レベルにまで到達しました。
ここまでプレイして見えてきたものが色々あるため、ここに記しておきます。
Tree of Saviorの優れた点
グラフィックが美しい
スクリーンショットを見ていただければ一目瞭然なのですが、とにかく2Dで描かれたグラフィックが綺麗です。日本人ウケする絵柄だと言えるでしょう。
近ごろ量産されている低予算でイマイチな品質の3Dグラフィックスのゲームに対し、「うちはあくまで美しい2Dグラフィックスで行きますよ」という強い意気込みを感じます。
この辺りは流石ラグナロクオンラインの後続作だなぁと思います。
BGMのクオリティが高い
また、音楽が素晴らしいです。一般的なMMORPGの音楽はイマイチなものが多く、ゲーム内BGMを切って別の音楽をかけながらプレイすることが多いのですが、このゲームのBGMは鑑賞に耐えうるクオリティを持っています。
暗号化されずにインストールフォルダにmp3形式で置いてあるため、実質的にゲーム内サントラを無料で入手できる点は評価できるのではないでしょうか。
個性のあるクラスシステム
オールドスクール、いわゆる旧式のMMORPGは、ステ振りとスキル振りのみが自由であり、職業・クラスの個性はその二つの振り分けで出す形式のものばかりでした。
しかしToSは独特なクラスシステムを有しており、プレイヤーの個性を大きく出すことができるものとなっています。
そのためどのクラスを履修するかで大変悩むことになり、それがとても楽しいです。
近年ではFF14のようにスキル振りの概念が全く存在しないMMORPGも多く存在しているため、個性をつけるシステムに飢えているプレイヤーは多いのではないでしょうか。
レアアイテムを落とすフィールドボスモンスターの存在
これは古きよきMMORPGに欠かせない要素でしょう。
数時間ごとに湧くフィールドボスモンスターを倒し、レアアイテムを狙う……見事獲得することができた時の脳汁の出方はきっと半端ないでしょう。
……とはいえこれは人によっては長所ではなく短所とも言い換えることができてしまいます。
誰もが羨むレアアイテムを持つボスモンスターは当然のようにサーバートップクラスの廃人が徒党を組んで管理しますし、与ダメージ上位のプレイヤーのみが報酬を獲得することの出来るシステムのため、一般プレイヤーがボス狩りに参加しても何のメリットもありません。
Tree of Saviorのイマイチな点
さて、ここからはストロングポイントではなく、ウィークポイントを書いていきます。
このゲームの欠点はレベル2桁台の時にはあまり気にならないものばかりかもしれませんが、レベル3桁台になると途端に噴出してくるものが多く存在してるのです。
身も蓋もない話ですが、Tree of Saivorはゲームデザインの設計に失敗していると言い切れてしまうでしょう。なぜなら……
強いレアアイテムは固定されており、それ以外はゴミで無価値
近年はDiabloやPath of Exileといった、いわゆるハック&スラッシュ系のゲームが人気を博しています。これらのゲームは敵を倒すことによってレアアイテムを獲得し、そのレアアイテムを元にビルドを考え、個性あるキャラクターを創りだすことを実現しています。
一見微妙な効果であったり、非常にピーキーな効果を持つレアアイテムを、プレイヤーたちは使いみちを必死に考え、新しく強いビルドを生み出していくのです。レアアイテムを掘ることは非常に楽しく、それがプレイヤーのモチベーションとなっています。
しかしToSでははっきりと「使えるアイテム」「使えないアイテム」が分かれています。
それはまだプレイヤーの研究が進んでないだけで、もしかしたら強いアイテムはあるのでは?と思う人もいるかもしれませんが、ToSは既に韓国で長い間サービスが提供されているゲームです。
そもそもレアアイテムにピーキーな効果がついていることはなく、誰がどう見てもこのアイテムは強い、弱い、と分かってしまいます。
事実低レベル帯では「アルデダガー」という補助武器が圧倒的な人気を誇っており、サブ武器を持つクラスであれば誰もが迷わずこのアルデダガーを求めています。これ以外の装備に価値はありません。
レアアイテムを落とすモンスターが低レベル帯に多く存在している
たとえば現時点で最強の片手槍である「ブランディッシュ」(レベル170から装備可能)というアイテムが存在しているのですが、これを製造するための素材を落とすモンスターのレベルは40台です。
ですので必然的にブランディッシュを完成させたいプレイヤーは低レベルのモンスターを大量に乱獲することになります。
そばで適正レベルのプレイヤーが必至に狩りをしている中、一撃で敵の群れを処理していくのです。
レアアイテムであるため、当然ドロップ率は低いです。結構な時間この作業をこなすことになります。
このゲームは横殴りの概念があり、横殴りされた側は何も得ることができません。よって40レベルの初心者は上級者にモンスターを奪われ、レベリングやクエストの進行を妨げられてしまうのです。
そしてなにより超格下のモンスターを乱獲しても楽しくありません。ただの作業です。
強い武器を作るための素材であれば強いモンスターが落とすのが筋だと筆者は思うのですが、ToSの開発はそうは思っていないようです。
友達と一緒にプレイがしにくいゲーム設計
このゲームはレベルが10以上離れると経験値をほとんど得ることができなくなってしまいます。そのため友達と一緒にプレイしたいと思っても、レベルが少し離れてしまうだけで不可能になってしまうのです。
現在は外部SNSなどを通じてMMORPGに乗り込む層が増えているため、少しでも進捗が違うと一緒にプレイできないゲーム設計は致命的と言えるでしょう。
ビルドの幅は広いが、特定のビルド以外はパーティーにすら入れてもらえない
クラスシステムが独特であり幅が広いと前述しましたが、これは大きな欠点でもあります。
どんなビルドでも活躍できるというのであれば非常によく出来たゲームといえるのでしょうが、残念ながら特定のビルド以外のキャラクターは存在価値がありません。
既に韓国・国際サーバーで強いビルドというものが確立されており、それ以外の個性あるプレイヤーが生きていくのは茨の道となってしまっています。
このゲームは200レベル以降のソロ狩りは非常に厳しい環境であり、パーティー狩りが実質的に必須となっています。
そのためパーティーに入れてもらえる、強いビルドでなければ生きていけません。
なかなかに敵モンスターが強力なゲームであるため、テンプレビルド以外では満足に狩りすることすらできないのです。
あまりにもユーザーにとって不便すぎるRMT対策システム
近年のMMORPGはすべからくRMTやBOT対策に力を入れています。ToSも例外ではありません。
それ自体は非常に良いことなのですが、このゲームはなんと「プレイヤー間でシルバー(お金)を取引することができない」というトンデモ仕様を採用しています。
わけがわかりません。MMORPGの華は経済です。プレイヤー間でアイテムに値段を付けあい取引する。これが面白いのです。
にもかかわらず、お金を取引することができない。なんだこりゃって感じです。
ですので韓国・国際サーバーのプレイヤーは苦肉の策としてアイテム「タルト」をお金の代わりに使って取引しているようです。
となるとRMT業者もそれに続きます。なので結局RMT対策は全くできていない状況なのです。
お金取引不可能システムはユーザーが不利益を被るだけで、何の意味もないRMT対策システムと言い切れるでしょう。
で、結局ToSはオススメなの?
残念ながらオススメできません。
良いところもたくさんあるのです。しかし、あまりに悪い点が目立ちすぎています。
これが新作ゲームであれば「パッチが当たれば面白くなるぞ!」と希望が持てるのですが、既に韓国では長くサービスしているゲームであることから、この先も改善される望みが薄いことが致命的です。
実際、韓国・国際サーバーでは既に過疎っていると言われています。
筆者がはじめてグラフィックやクラスシステムを見た時、「すごく面白そう。これは期待できる。なんで海外だとコケてるんだろう?」と思いましたが、プレイしてみてなるほどと思ってしまいました。
また、ラグナロクオンラインの後続作と言われていますが、あちらとToSは全く違うゲームと断言できます。
雰囲気にはラグナロクオンラインっぽさが確かに存在しているのですが、ゲームシステムは全くの別物です。
これからのMMORPGを考える
ToSは最後のオールドスクールMMORPGだ、と考えているMMORPG愛好家は多いと思います。
事実最近のMMORPGはFF14,DQ10,PSO2のようにお手軽にプレイ可能なゲームが多く、がっつり時間を割く必要性のないものばかりとなっています。
近年は昔と違い、ネットゲームが星の数ほど存在しているため、一つのゲームに時間を費やすプレイスタイルを取る人は少なくなってきているのでしょう。
LoLやオーバーウォッチのような短い時間(?)にぎゅっと興奮の詰まったゲームが流行っている現状に納得できてしまいます。
個人的にはレベリング・アイテム収集がエンドコンテンツなゲームには期待しているのですが……Lost ArkやLineage Eternalの続報も無いことですし、厳しいかなぁ……。
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